大都市のバス路線は、中心部から郊外へ放射状に延びるのが一般的です。そのため、中心部では同じ道路に多数のバス路線が集中し、非効率な運行形態になりがちになっています。この課題の克服に挑戦したのが新潟市。2015年に「萬代橋ライン」という基幹バス路線を開設し、拠点バス停で郊外への支線バスに接続する運行形態に移行しました。
萬代橋ラインを「BRT(バス高速輸送システム)」と位置付け、輸送力の高い連節バスを投入。これらの施策で、バスネットワーク全体では効率的な運行形態になったそうです。
先日、新潟を訪れた際、萬代橋ラインに乗車してみました。連節バスは快速便として運行していることもあり速く、乗り心地も快適でした。終点のバスターミナルは横断歩道や歩道橋を渡らずに乗り換えられるようになっていて、乗り継ぎ利用者への配慮も感じられます。
ただ、これは一度限りの旅行者の視点であって、頻繁に利用する地元客からは、乗り換えが面倒という不満の声が噴出しているそうです。夏はともかく、新潟の冬は寒く積雪もあります。待合室のあるバス停はわずかで、乗り換えが負担になるのは理解できます。
「BRT」という呼称にも抵抗感があるようです。BRTの一般的な定義としては、専用レーンを設けるなどして、速達性、定時性を高めたバスを指します。しかし、萬代橋ラインにはそうした施策はなく、むしろ連節バスは定員が多いので、満員時には運賃収受で乗降に時間がかかるという問題すらあります。快速便として運行しているのは、乗降機会を減らすことで遅延を防ぐ目的もあるようです。
2019年には新潟市が「総括」という形で問題点などをまとめ、見直しの方針を示しました。ただ、新型コロナの影響で、バス利用者が激減。当面は現状維持となっています。
起点となる新潟駅では、JR線の高架化事業が行われていて2022年に完成する予定です。その後、萬代橋ラインは、高架をくぐり市南部への延伸も計画されているそうです。
新潟市の新バスシステムは、もともと段階的に整備する方針であり、BRTも少しずつ進歩していくことでしょう。今後は車両だけではなく、バス停の快適性も向上させるなどして、利用者の負担を軽くする必要がありそうです。
(旅行総合研究所タビリス代表)